劇場版クレヨンしんちゃん「嵐を呼ぶモーレツ!大人帝国の逆襲」は、大人達を洗脳し子供時代にかえらせ、日本を古き良き20世紀に戻す野望を持った秘密結社と、しんちゃん達が戦うという物語。
子供ではなく親たちの心をつかみ、大人が突然映画館の中で号泣してしまうアニメとしてちょっと話題になった。
その中に次のようなシーンがある。
野原ひろし(しんちゃんの父)は、悪の結社イエスタデイ・ワンスモアにより暗示をかけられ、子供にかえってしまっている。
ひろしの子供の頃の回想シーン。
場面は1970年の大阪万博に飛ぶ。5歳くらいのひろしの胸に万博の迷子ワッペンがついている。蝶のデザインの迷子ワッペンの大写し。
ひろし:(半泣きになって)「やだやだぁ、オラ月の石見たいよぉー。」
ひろしの父:「ひろし、おめえもわからねぇ奴だなぁ。3時間も並んで石っころ見たってしょうがなかっぺぇ。それよか、他のパビリオン行って、かわいこちゃんのコンパニオン見た方がいいじゃなぃ~?」
ひろしの母:「父ちゃん!子供に何言うの!」
ひろし:(さらに泣きそうになって)「ただの石じゃないもん!月の石だもん!アポロが取ってきたんだもん!」(涙をこぼす)
(迷子ワッペンとは、来場した子供全員に配られたもので、迷子になった時のために胸に付けておくことになっていた。通し番号がついており、その番号で子供の情報が検索できたのだと思う。)
ひろしの胸の迷子ワッペンを見た瞬間、自分も同じ蝶の形をした迷子ワッペンを、万博に行った記念として引き出しに大切にしまっていたことを思い出した。あれは私の宝物だった。
その迷子ワッペンが、押し込めていた私の過去の記憶の扉を開いた。どうやらその時、私の心の一部が子供に戻ったようだ。
そういえば、自分もアメリカ館の月の石をめちゃくちゃ楽しみにしていたのに、あまりに行列が長くて両親が並ぶのを嫌がり、アメリカ館を見るのはやめると言われて泣く泣くあきらめたことを思い出した。私は良い子を演じることで親の気を引くタイプの子供だったので、一生懸命我慢して月の石が見られないことを必死に納得しようとしたけど、やっぱりすごく悲しかったことを思い出して、急に泣けてきた。
そう、あれは決してただの石なんかじゃなかった。
親たちにはそう見えたかも知れないが。
良い子を演じてしまったことで抑圧し犠牲にしてきたいろいろな「月の石」を自分は今でもあきらめきれず、切望し、追い求めている気がする。
すでに気づいている大人も多いようだが、ぐさっと胸に突き刺さる「クレヨンしんちゃん」を子供向けと即断するのは浅はかなことである。
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